Japanese Music Reviews

歴史の中で消費され、捨てられていく日本の音楽を紹介し、文化として再構築することの一助になれば

【氷室京介】09 beat haze odyssey(2000)

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09 beat haze odyssey

今回は、氷室京介8枚目のオリジナルアルバム、beat haze odysseyをご紹介します。
このアルバム、収録曲が7曲と少なく、ミニアルバムとみなされることもあるようですが、7曲で合計30分以上のボリュームがありますし、それこそレコードの時代だと30分程度の作品など普通なので、ここでは8枚目のオリジナルアルバムとして扱いたいと思います。

ただ、収録時間だけでオリジナルアルバムだと認定するわけではありません。7曲でもアルバムとしての聴き応えがあると思うからです。

今までご紹介してきたアルバムの中で、2枚目の「NEO FASCIO」を氷室京介最大の異色作とご紹介しましたが、今作も氷室京介の全カタログの中では異色というべき作品だと思います。
何が異色なのか。それは、このアルバムが非常に「ポップで明るい作品」だからです。

わかりやすいという意味では、6枚目の「MISSING PIECE」もありますが、あの作品は歌謡曲(J-POP)的なわかりやすさを追求した作品だったところ、本作はイギリスやアメリカのポップソングを氷室京介が作って歌う、というコンセプトが感じられます。シングルの「Girls Be Glamorous」なんてロックなサウンドではありますが、リズムやメロディはアメリカ的なポップフィーリングがありますね。6曲目の「Julia」なんて、ロネッツの「BE MY BABY」みたいなサウンドで、イントロを聞いただけだと、山下達郎かと思うこと間違いなしです。

また、洋楽的なサウンドになっていると言いましたが、と言っても完全な洋楽ではなく、サビの部分など、日本的なメロディを残しており、日本のリスナーに聞きやすい作品になっていますね。

ただ、どの曲も悪くないのですが、これという決定的な曲には欠けるところはあります。また、曲自体は良くても、これまでの氷室京介と比べて、かなりポップな曲ばかりなので、氷室京介が誰かに提供した曲のセルフカバー集みたいに聞こえる瞬間もあります。といっても本当にセルフカバーの曲は、最後の「ONE」だけですけども。この曲はちょっと歌謡曲というか演歌みたいに聞こえてしまうところがあるので、ちょっと残念でしたが。

本作は、僕の考える氷室京介の中期最後の作品ですね。「MISSING PIECE」、「MELLOW」ときて本作までの3作を中期としていますが、この時期はポップで分かりやすい作品を作ろうという意思が感じられます。そして次作からを後期としていますが、中期と比べて俄然ハードな世界観を追求していくことになります。そこは次回にお話ししましょう。