Japanese Music Reviews

歴史の中で消費され、捨てられていく日本の音楽を紹介し、文化として再構築することの一助になれば

【氷室京介】全オリジナルアルバムランキング

氷室京介全オリジナルアルバムランキング

はい、前回までで氷室京介の全オリジナルアルバムのご紹介が終わりましたが、今回は、これまでご紹介してきたアルバム12枚に順位をつけていきましょう。では12位からカウントダウン方式でいきます。

12位 I·DE·A(1997)

最下位は、7枚目のI·DE·Aになりました。これはスティーブ・スティーブンスのアルバムになってしまっていて、しかもそれがかなり古くさいエイティーズハードロックだったからですね。氷室京介との相性も決して良くなかったと思います。シングルはいいのですが、アルバム曲がどうにも。

 

11位 MISSING PIECE(1996)

このアルバムは、ヒットを狙った歌謡曲的な曲が目立つアルバムですが、曲として悪い訳ではないです。ただ、あまりにもロック的な要素がないので、ロッカーとしての氷室京介を聴きたい身として、あえて低い順位にしました。ただ、初めて聴く人はこのアルバムから入っていくのはアリだと思います。聴きやすいし、ヒット曲もありますしね。

 

10位 "B"ORDERLESS(2010)

現時点でのラストアルバムですね。珍しく特に新しい試みのない、総決算のようなアルバムで、ロックな曲で最初から畳み掛けてくるのですが、曲が弱くて印象に残るのは矢沢永吉みたいな嗄れ声だけというのが残念なアルバムです。中盤からはよい曲もありますし、「BANG THE BEAT」は後期を代表する名曲だと思うのですが、何度も聴きたくなる作品かといえば、そうでもない。

 

9位 FLOWERS FOR ALGERNON(1986)

記念すべきファーストアルバムですね。ファンによってはこのアルバムを最高傑作にあげる人もいるのではないでしょうか。なんといっても「ANGEL」が入っていますし、アルバム曲も「ROXY」「LOVE&GAME」、「SEX&CLASH&ROCKNROLL」と、ライヴでの定番曲が多数ありますから。ただ、このアルバムはいかんせん音が古すぎて、その時点で聴く人を選ぶので、そこまで上の順位には出来なかったですね。

 

8位 Memories of Blue(1993)

8位は、氷室京介最大のヒット作ですね。これも人によっては最高傑作に選ばれるのかもしれません。ただ、サウンドが当時の流行りの音なので、どうも借り物のように感じられてしまうのが残念なところです。曲自体は次の「MISSING PIECE」と同じくらい聴きやすいし、でもロック的なところも残っていて、そういう意味ではバランスのいい作品と言えるのかもしれません。決して悪い作品ではないです。

 

7位 FOLLOW THE WIND(2003)

このアルバムはいわゆる歌謡ロック路線のアルバムですね。サウンドは前作に比べて大分ハードになりつつ、哀愁のあるメロディの曲が、時おり挟み込まれるラップ(的な歌)と相まって、独自の世界観を作っています。全曲の作詞を担当した森雪之丞の世界観でもありますね。これ、2003年の作品なのですが、当時としてはかなり新しい試みの作品だったのではないかと思います。ただ、シングルの「Claudia」は、アレンジがもろに90年代的で、歌メロをなぞるシンセが気になって、トゥーマッチな気持ちにはなります。

 

6位 beat haze odyssey(2000)

おそらく、このアルバムを6位にするファンはあまりいない気がします。でも、これはもっとも過小評価されているアルバムですね。6位に選出した理由は、単純に収録曲がどれもよいからですね(まあ、ラストの曲はちょっと微妙ですが)。氷室史上もっともポップに寄せた作品で、異色作であるのは間違いないですが、どの曲も良くできています。「Julia」が特に素晴らしいですね。ロックではないけれども、これだけよい曲が揃えられれば、なにも言えません。曲数が少ないのも、それほどウィークポイントにはなっていないと思います。何度もリピートしやすいですしね。

 

5位 IN THE MOOD(2006)

11枚目のアルバムですね。エモやニューメタルに寄せたサウンドは若々しさを演出しつつ、楽曲はよく練られており、勢いだけでないベテランの技が効いたアルバムです。カバー曲が2曲あるのが気にはなるんですが。前作「FOLLW THE WIND」の歌謡ロック路線を引き継いだ歌謡曲的なメロディの曲(「Sweet Revolution」など)も悪くはありませんが、「WILD ROMANCE」が頭ひとつ抜けてますね。この曲に引っ張られてアルバム全体のテンションも上がっています。後期の代表作と言えるでしょう。

 

4位 NEO FASCIO(1989)

4位は、セカンドアルバムの「NEO FASCIO」になりました。このアルバムは、個性や完成度から言えばもっと上位でもいい作品ですが、やはり氷室京介の作品としては最も異質・異端なので、この順位が妥当ではないかということです。ただ、最も知名度の低いアルバムだと思うので、もっと知られていい、隠れた名作ですよね。

 

3位 MELLOW(2000)

このアルバムも、「beat haze odyssey」と同じく、捨て曲の少ないアルバムですね。「永遠」のような乾いたバラードも魅力的ですが、「jive!」や「bring da noise」のようなグルーヴィなロックも良いし、全方向に良くできたアルバムという感じです。バラード集と誤解されてそうなので、もっと聴かれるべきアルバムかとも思います。

 

2位 SHAKE THE FAKE(1994)

あとは、ひたすらロックな曲がカッコいいアルバムですね。2位は5枚目のこのアルバム。ヒリヒリするような切れ味の鋭いギターのタイトル曲もあれば、氷室史上もっともブルージーな「BLOW」もあり、聞き応えのあるロックナンバーが詰め込まれたアルバムです。アルバムを通して、焦燥感や原状に満足できない飢えのようなものが伝わってきて、それがこのアルバムを別格の存在にしている気がします。ロック好きなら是非聴いてほしいアルバムです。

 

そして、僕が選んだ氷室京介の最高傑作は、これです。

 

1位 Higher Self(1991)

3枚目のアルバム、「Higher Self」ですね。このアルバムは、2位の「SHAKE THE FAKE」と同じくロックにこだわったアルバムだと思いますけど、あの作品になかった決定的な曲が、本作には3曲も入っており、またアルバム曲も捨て曲なしと、文句無しの1位です。3曲はシングルの「CRIME OF LOVE」、「WILD AT NIGHT」、「Jealousyを眠らせて」ですが、これらがちょうどよく前半、中盤、後半に配置されていて、その間を埋めるアルバム曲も小気味のよいコンパクトなロックだったり、お遊び的な雰囲気のある曲(「CABATET IN HEAVEN」)だったりで、よい意味で方の力が抜けていて聴きやすいですし、またちゃんとロックしていて、イキイキしている氷室京介が聴けるのが良いですね。このアルバムも次の「Memories of Blue」の影にかくれて過小評価されている気がしますね。これから再評価されることを願います。