Japanese Music Reviews

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【布袋寅泰】01 GUITARHYTHM (1988)

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01 GUITARHYTHM (1988)


はい、今日から布袋寅泰の全オリジナルアルバムを毎日1枚ずつレビューしていきたいと思います。
本日は、布袋寅泰のソロとしての記念すべきファーストアルバム、GUITARHYTHMをご紹介しましょう。
このGUITARHYTHM(ギタリズム)というタイトルですが、布袋のアルバムのシリーズ名にもなっていきます。なので、本作はソロのファーストアルバムでもありつつ、ギタリズムシリーズの第一作目にもなりますね。ギタリズムとは布袋の造語で、ギターとリズムをつなぎ合わせた言葉になります。布袋と言えばBOOWYBOOWYの音楽の特徴と言えば、その8ビートが挙げられますが、ビートという言葉に布袋も、BOOWYのボーカル氷室京介もこだわりがあるようですが、このギタリズムと言う言葉も、ギターとビートという2つにこだわったアルバムという意味ではないでしょうか。

では、内容について行きましょう。まずざっくりとした感想ですが、この作品、宅録みたいなチープなサウンドの楽しいアルバムですね。気軽に楽しめる、実はすごく敷居の低い作品だと思います。その理由ですが、この作品、ギター以外は打ち込みだと思うのですが、そのサウンドが実に古めかしいチープなサウンドで、なんとも拍子抜けするんですよね。対照的なんですが、氷室京介のファーストアルバムは気負った感じがすごく出ていて、それがひとつの魅力にもなっていましたが、こちらは全然気負った感じがしなくて、一人、家で楽しみながら作ったような(実際は普通にチームで制作していますが)肩の力が抜けた感じがよいですね。

それに、結構ユニークな聴き応えもあります。ギターだけ聞くと結構ハードな音色だったりするんですけど、ギター以外はエレクトロポップみたいなサウンドなので、いわば初期のYMOにハードロックのギタリストが加入したみたいな感じ、とでも言えばいいでしょうか。「C’MON EVERYBODY」(エディ・コクランのカバー)のようなロックもありますが、ロックというよりエレクトロポップと言った方が近い曲(「DANCING WITH MOONLIGHT」、「WAITING FOR YOU」とか)も多いですし、その折衷感がこのアルバムの魅力ですね。

そして、このアルバム、全曲で布袋が歌っているんですが、「スリル」みたいなクドい歌い方ではなくて、もっと抑えた感じで歌っているので、あの歌い方が苦手という人にもとっつきやすいと思います。軽く聞き流せる感じというか(良い意味で言っています)。

ギタリズムというだけあって、どの曲もギターが主役なので、ボーカルはそのくらいの方がいい気がします。そして全曲英詩(一曲ドイツ語!)なのもよいですね。決してアメリカやイギリス的な音楽には聞こえないんですが、不思議な無国籍感があって、それも魅力の一つになっています。
一曲挙げるとすれば、やはり先ほど挙げた「C’MON EVERYBODY」のカバーでしょうか。ライブでの定番曲でもあるようですし、このキャッチ―さとチープな打ち込みサウンドは妙に癖になります。この曲だけでも聞いてもらえれば、布袋のいかついイメージ、かなり変わるんじゃないかな。

全体的に、本作、かわいらしい感じがする、キュートなアルバムと言えますね。ですが、残念なことに、こういうアルバムはこれっきりになり、以降はどれもハードなロックアルバムになっていきます。このアルバムの後、complexを結成・解散して、その後にセカンドアルバムが制作されているので、以降の作品が本作とはだいぶ違うのは仕方がないと思います。ですが、このアルバムの路線をもっと発展させていったらどうなったのか、興味はありますね。