【布袋寅泰】03 GUITARHYTHM Ⅲ (1992)
03 GUITARHYTHM Ⅲ
今回は、布袋寅泰のサードアルバム、GUITARHYTHM Ⅲをご紹介しましょう。
前作は、布袋の音楽的なルーツを元に、あらゆる種類の楽曲が24曲も詰まった作品でしたが、本作は音楽性でいうと、古い言葉ですが「デジタルロック」をテーマにした楽曲で統一されており、前作とは全く違う作風ですね。
前作からわずか1年でのリリースですが、これだけアルバムごとに音楽性が変わる人も、当時の日本では珍しかったのではないでしょうか。しかもそれでチャートのトップ争いをしていたのですから大したものです。
そして、ここでいう「デジタルロック」とは、打ち込み主体のロックということですが、言ってしまえば、イギリスのバンド、ジーザス・ジョーンズのことですね。かのバンドの影響で作成されたと言っても言い過ぎではないのでは、と思うくらい強く影響されています。実際、「ELECTRIC WARRIOR」はジーザス・ジョーンズのボーカルのマイク・エドワーズと共作していますしね。
ただ、打ち込みサウンド自体は今回初めて導入したのではなく、ファーストアルバムがポップな打ち込みサウンドなので、慣れていたのか、借り物のような感じはなく、自分のサウンドに落とし込んでいるのは流石ですね。特筆すべきは、「EMERGENCY」や「さよならアンディ・ウォーホル」でしょうか。「EMERGENCY」は布袋初のハウスをとりいれた曲で、良い意味で布袋だとは気付かない曲ではないでしょうか。「さよならアンディ・ウォーホル」は、スローテンポのシャッフルの曲ですが、今の耳で聞くとマリリン・マンソンに聞こえますね。もちろんパクリとかではなく、この時点でマリリン・マンソンはまだデビューしていないので、初めて聞いた時には驚きました。
ただ、このアルバム、過去2作と比べてギターがあまり出てきません。ジーザス・ジョーンズ的なサウンドはすごくうまく作れているのですが、布袋の魅力と言えばやはりギターだと思うので、アルバムを聴いても、その点が消化不良を感じるところはあります。
また、楽曲のクオリティも、前2作と比べて落ちているように感じますね。前作は2枚組だったので、楽曲も玉石混交のところはあったのですが、それでも打率はあちらの方が高かったと思います。サウンドへのこだわりは素晴らしいのですが、楽曲自体の質は若干弱いかな、という印象です。
ただ、決して失敗作ではなく、一聴の価値は大いにあります。何といってもサウンドだけ聞けば洋楽とそん色ありませんし、なにより前年(1991年)にジーザス・ジョーンズが「Doubt」でブレイクした一年後にこれだけのものを作れるのはすごいことです。ジーザス・ジョーンズ自体は、「Doubt」と同年にリリースされたニルヴァーナの「NEVERMIND」によるグランジ革命で、シーンから一瞬にして消えてしまうのですが。