Japanese Music Reviews

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【布袋寅泰】05 King & Queen(1996)

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05 King & Queen(1996)

今回は、布袋寅泰5枚目のオリジナルアルバム、King & Queenをご紹介しましょう。

このアルバムは、布袋のオリジナルアルバムで最大のヒット作ですね。ずばり代表曲「スリル」が入っていますし、「ラストシーン」もヒットしました。ただ、それに限らずアルバム全体のクオリティは高いです。

路線としては、前作の歌ものを聴かせる路線の延長線上にありますが、過去4作が持っていた多様な音楽性のエッセンスを抽出して、すごく分かりやすい形に噛み砕いたような、誰でも楽しめるアルバムになっています。これまでの布袋の集大成とも言えますね。

個々の楽曲については、まずはシングル3曲でしょうか。江頭2:50のテーマソングにされてしまった「スリル」ですが、サビの「baby」大連発は一回聴いただけで誰もの耳に残るのでは。歌謡曲的な構成の曲ではありますが、楽しいロックナンバーだと思います。
「ラストシーン」も素晴らしいですね。タイトで緊張感のあるバラードに仕上がっています。布袋流のバラードの一つの完成形ではないでしょうか。
「命は燃やしつくすためのもの」は、タイトルがちょっと古めかしいのですが、布袋史上もっともスケール感のある曲ですね。ギターがイキイキしていて良いです。また、この曲、地味にドラムソロが入っているのですが、ドラムソロが入ったシングル曲というのも珍しいですね。

アルバム曲も「TWO OF US」、「King & Queen」、「FULL MOON PARTY」など佳曲が多いです。インストの2曲(「SPACE COWBOY」、「VELBET KISS」)もアルバムのいいアクセントになっています。しかしロカビリー調の曲(「RUNAWAY!JOHNNY!!!」、「FULL MOON PARTY」)が2曲もあるのは、ブライアン・セッツァーが参加しているとは言え、少し余計な気もします。別にロカビリーのアルバムじゃないので一曲で良かったかと。

最大のヒット作だけあって、非常にキャッチ―という意味で、やはり完成度は高いです。聴いた後の満足感もありますしね。ただ、これは欠点ではないのですが、新しいことにチャレンジするような野心的なアルバムではなく、誰もが落ち着いて楽しめるアルバムなので、物足りなくなるところはあるかもしれません。そして、その反動なのか、次作は布袋史上最もハードな作品になるのでした。