Japanese Music Reviews

歴史の中で消費され、捨てられていく日本の音楽を紹介し、文化として再構築することの一助になれば

【布袋寅泰】09 DOBERMAN(2003)

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09 DOBERMAN

はい、今回は布袋寅泰の9枚名のオリジナルアルバム、「DOBERMAN」(ドーベルマン)をご紹介しましょう。
前作「SCORPIO RISING」からわずか1年でリリースされた本作。ドーベルマンという、いかにも癖のありそうなタイトルに、アルバムジャケットがサングラスをかけて首輪をつけた布袋の顔のアップとくれば、前作のヤンキーロックと同じ路線か、と連想する人も多いのでは。

しかし、そんなジャケットの印象とは違い、このアルバムは、6枚目の「SUPERSONIC GENERATIONから続いた4枚のアルバムの総集編のような内容になっています。確かに前作と同じくロックの占める割合は多いですが、前作ほど聞きづらいところはなく、適度にリラックスしていて、布袋の自然体のロックが聞ける作品になっています。布袋のファンならだれでも素直に聞けるアルバムではないでしょうか。布袋を初めて聞くという人にも、このアルバムから入るといいかもしれませんね。聞いてみて、もっとハードな曲が聞きたいと思えば「SUPERSONIC GENERATION」や「ギタリズム 3」を聴いてみればいいですし、メロディアスな部分が気に入れば「King & Queen」や「ギタリズム 2」を聴くと、より好みの作品に出会えると思います。そういう意味で総集編という印象を持ちました。

あと、このアルバムのもう一つの特徴を言えば、ずばり「歌謡曲」ですね。メロディが日本人受けのする歌謡曲的な曲が多いのですね。ただ、同じように歌謡曲的な「King & Queen」とはちょっと違っていて、あのアルバムは売ることを意識して作った作品という印象でしたが、このアルバムは布袋から自然に出てきたメロディが歌謡曲的だった、という風に聴こえます。そういう点では、もしかしたら4枚目の「ギタリズム 4」が一番近いアルバムなのかもしれませんね。

個々の楽曲について言えば、とくに印象的なのはシングルの「NOCTURNE NO.9」と「EVIL DANCE」ですね。特に「NOCTURNE NO.9」は、ここまでBOOWYを彷彿とさせる曲は布袋ソロで初めてではないでしょうか。氷室京介が歌う姿がイメージできるくらい、BOOWYにありそうな曲ですね。布袋はあのBOOWYのソングライターだったんだという事実を思い出させせる良曲です。

全体的に、決して悪くないです。布袋らしさも出ていますし。ただ一方で、若干小さくまとまりすぎていないか、と思うところもあります。アベレージが中ぐらいの曲が多いというか。過去の作品と比べて、まだこんなものじゃないでしょう、という気持ちはありますね。