Japanese Music Reviews

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【布袋寅泰】12 GUITARHYTHM Ⅴ(2009)

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12 GUITARHYTHM Ⅴ

はい、今回は布袋寅泰の12枚目のオリジナルアルバム、「GUITARHYTHM Ⅴ」(ギタリズム5)をご紹介しましょう。
本作は、布袋のソロデビューから4枚目まで続いたギタリズムシリーズの第5弾という位置づけの作品になっており、ある意味原点回帰したような形になっています。ただ、ギタリズムシリーズにとくに思い入れのないリスナーからすれば、特段の意味はないですけれど。そもそもこのシリーズ自体が、共通するテーマが有って無いようなものだと思うので。

しかしあえて言えば、ソロ第一作の「ギタリズム」と似た空気感は確かにありますね。80年代のチープなエレポップのサウンドという点で共通点があるように思います。(ただ、大きな違いもあって、それは後述します。)

本作の特徴ですが、「チープでキッチュ(俗悪)な未来のロック」のイメージですね。アルバムジャケットにある、80年代のSF映画に出てきそうな布袋の姿を見ても、キッチュで、少し安っぽいB級SF映画的な雰囲気を感じないでしょうか。それは楽曲のサウンドにも表れていて、全体的に打ち込みのサウンドなのですが、同じように打ち込み主体のアルバム「SUPERSONIC GENERATION」とは違って、どこかあか抜けない、ケバケバしい音になっていると思います。

そういうキッチュな雰囲気は布袋には合うような気もするのですが、ただ残念なことに、ギタリズム(「ギター」と「リズム」)と銘打ったアルバムなのに、本作はそこまでギターが前に出てこないのですね。少し似ているといったGUITARHYTHMはあくまでギターを聴かせるためのサウンドで、そのチープなサウンドとギターのミスマッチ感こそが魅力だったのに、今回はギターもエレクトロサウンドの一部のような扱いになっていて、これではギタリズム(「ギター」と「リズム」の合体)と名乗る甲斐がないのではないか、と思ってしまいました。

楽曲自体も、印象的な曲が少ないですね。「BEAUTIFUL MONSTERS」は共演しているLOVEとのデュエットが面白くはありますが、曲は小室哲哉みたいで、布袋っぽさがほとんどありませんし。

全体的にアイディアとしては面白いと思うのですが、一方で「INTRO Welcome to G.V」でクリス・ペプラー(!)にナレーションをさせたり、ちょっとふざけ過ぎなところ、アイディア先行で楽曲自体はどれも淡泊だけども17曲67分という作品トータルで冗長なところから、評価は難しいですね。