Japanese Music Reviews

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【布袋寅泰】13 COME RAIN COME SHINE(2013)

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13 COME RAIN COME SHINE(2013)

はい、今回は布袋寅泰の13枚目のオリジナルアルバム、「COME RAIN COME SHINE」をご紹介しましょう。
このアルバムは、一言で言えば、まるで第二のデビュー作のような、清々しい音が特徴の作品です。
サウンド的には、前々作の「AMBIVALENT」が最も近いですね。同作と同じように、本作はドラムが全て生演奏で、実にシンプルなバンドサウンドだけで構成されています。ただ、「AMBIVALENT」の楽曲は、どこか一筋縄ではいかない、ちょっとひねくれたような曲ばかりでしたが(そしてそれが魅力でもありましたが)、今回はその真逆で、全曲がシングルにできるような、ストレートで分かりやすい曲しかありません。もちろんどの曲もロックではあるのですが、同時に非常にポップであり、聞く人を全く選ばない作品ですね。キャッチ―さでは「King & Queen」を超えるかもしれません。

また、どの曲も過去最高にクオリティが高いですね。曲のクオリティというときに僕が基準とするのは、①音が良いか、②楽曲全体として作家の個性が出せているか、③メロディが耳に残りやすいか、④バンドアンサンブルがよいか、ですが、その全てが高いレベルに達していると思います。
そして、その一番の理由は、布袋のギターにあるように思います。ギターがこれまででもっともよく鳴っているんですね。とくにカッティングです。実にコクのあるカッティングがあらゆる曲の随所に挟み込まれていて、それが大きな効果を上げています。本作のバンドサウンドは「AMBIVALENT」と同じかそれ以上に、邦楽としてはスカスカなのですが、それもありギターがよく鳴っています。

歌詞も本作の特徴ですね。「My Ordinary Days」のようなシュールな歌詞もありますが、大半が実にストレートな感情を表現しており、それが楽曲によく合っています。つまり、表現したいものが明確にあったということではないでしょうか。

ただ、人によっては刺激が足りないと思うかもしれません。60分と少し長いのも気にはなる所です。あと一曲減らして11曲だったら、もっと完成度が上がっていた気もします。まあこれはないものねだりですが。

本作、確実に布袋寅泰ディスコグラフィでトップ3に入る作品ですね。この時点で布袋50歳、キャリアは約30年のベテランですが、それでこれだけの作品を作れたのはすごいですね。全体を流れる清々しさが何度も聞きたくさせる作品です。