Japanese Music Reviews

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【布袋寅泰】17 GUITARHYTHM Ⅵ(2019)

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17 GUITARHYTHM Ⅵ(2019)

 はい、今回は布袋寅泰の17枚目のオリジナルアルバム、「GUITARHYTHM Ⅵ」(ギタリズム6)をご紹介しましょう。

本作は、布袋のデビュー作「GUITARHYTHM」から続く、ギタリズムシリーズの6枚目という位置づけになります。しかし、全シリーズに共通したテーマなどはなく、しいて言えば、打ち込みのリズムトラックに布袋のギターという基本構成はありますが、まあ、布袋の気分的なものだと思われます。

前作が散々な出来だったのですが、本作はやや復調しているように感じます。しかし、今作は、全13曲がバラバラで統一感がないこと、ゲストに頼っている印象から、必ずしも良い出来とは言えません。

まず、統一感がない点ですが、メタル、歌謡ロック、80年代エレポップなどがあちこちに散在しています。これまでも様々なジャンルの曲が混在したアルバムは、古くは「GUITARHYTHMⅡ」からありましたが、今回はただジャンルがバラバラの曲が並んでいるという、それ以上のものが感じられません。そういうアルバムでも名盤とされるものはあると思いますが、それはあくまで収録曲1曲1曲が個性的で魅力がある場合のみです。前作でも同じことを感じましたが、どうも心ここにあらずのような、本当にこの曲を作りたくて作ったのか、と思わされるような、今までのアルバムにあった熱がないのですね。

また、本作の特徴として、多彩なゲスト(元BOOWY松井常松高橋まことMAN WITH A MISSIONCornelius)を迎えているところがありますが、正直言って話題作りでは、と思わずにいられないほど、布袋の存在感やモチベーションが感じられません。松井・高橋との「Thanks a lot」は、普通のJ-ROCKの曲にしか聞こえませんし、MAN WITH A MISSIONとの「Give It To The Universe」は、良い曲だと思いますが、正直に言って、布袋の曲というよりMAN WITHの曲ですね。

シングルになった「202X」は、アニメ「北斗の拳」のテーマソングとして作成された曲ですが、いわゆるアニメタルですね。サウンドは完全なメタルで、これまでの作品では「SCORPIO RISING」の収録曲に一番近いです。ただ、あのアルバムにあった、うっとうしいほどの気合のようなものはこの曲にはないですね。サウンドも布袋のボーカルも不思議なほど抑えられていて、すごく平熱で演奏しているように聞こえます。それが悪いわけではありませんが、この曲もやりたくてやってるのかな、と思ってしまうのです。

結論として、前作よりは良いのですが、布袋のモチベーションが感じられないという点では変わりなく、また残念という気持ちですね。次回作はもう少しインターバルをおいて、本当にやりたい音楽をやってくれたらうれしいのですが。

 

さて、これで布袋寅泰の全オリジナルアルバムのレビューが終わりました。次回はこれまでレビューしてきたアルバムをランキング付けします。乞うご期待。