Japanese Music Reviews

歴史の中で消費され、捨てられていく日本の音楽を紹介し、文化として再構築することの一助になれば

【ユニコーン】01 BOOM(1987)

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はい、今回からユニコーンのオリジナルアルバムをご紹介していきましょう。まずは、1987年発表のファーストアルバム、BOOMです。

このアルバムは、一言で言えば、シリアスなユニコーン、でしょうか。ユニコーンといえば、徹底的にふざけること、シリアスにならないことを目標にしているかのようなアティテュードが印象的なバントですが、このアルバムは、そんなユニコーンの中でも、おそらく唯一のおふざけなしのアルバムかと思います。なので、いつものユニコーンをイメージして聴くと肩透かしかもしれませんね。

ただ、音楽的には後年と大きく違うわけではなく、ユニコーンサウンドの基本になるハードロックバンドとしてのサウンドは、このアルバムでかなり完成されています。ハードロックをルーツに持ちつつ、ポップさを足すためかシンセのサウンドが前面に出されているのが、サウンド面の特徴でしょうか。しかし、そのミックス加減が少し中途半端にも感じます。ありがちなサウンドと言えばそうなので、さほど個性的とは言えないと思うのですが、もっとポップに振り切るか、ハードにこだわるかすれば、サウンド的にも面白くなった気もしますね。しかしそれを補う曲の力、それにボーカルの力がこのアルバムにはあります。

曲の方から言えば、メロディが日本的な哀愁のあるメロディであること、ギターやベースの印象的なリフが多いことがあります。とくにメロディは80年代特有の哀愁のある感じがなつかしさを感じさせますが、ただ若い人が聴けば新鮮に感じられるかもしれませんね。

ボーカルの方ですが、ユニコーンは後年メンバー全員が歌うバンドになりますが、このアルバムでは全て奥田民生がボーカルです。ただ、民生のボーカルが、今と別人かと思うほど全く違います。これは声が変わっただけではなく、歌唱方法から変えたのではないかと思うのですが、どちらにしても歌唱力はこの時点でかなり高いレベルに達しています。ボーカルの歌唱力によって、曲の持つ力以上のものが出ているようにも思えますね。

個々の楽曲では、「Maybe Blue」 や「Pink Prisoner」が印象的でしょうか。とくに「Pink Prisoner」は、これ以降のユニコーンにもつながるサウンドが展開されており、対照的に「Maybe Blue」は、ザ・エイティーズのロックという感じで、今聴くとすごく新鮮ですね。

このアルバムは、ユニコーンと言われなければ分からないくらい、今のイメージとはかけ離れていますが、アルバムの完成度はかなり高いです。収録曲も全10曲とコンパクトなところも良いですし、演奏力も楽曲の構成力も新人離れしたものです。ファーストアルバムなのにそういった初々しさはまるでないですね。

今の耳で聴くと、ドラムのサウンドなど時代を感じるところもなくはないですが、それでもいまだ広くリスナーに訴える力をもった、誰にでも勧められるアルバムだと思います。すごいファーストアルバムですね、これは。