【氷室京介】12 "B"ORDERLESS(2010)
12 "B"ORDERLESS
今回は、氷室京介12枚目のオリジナルアルバム、「"B"ORDERLESS」をご紹介します。
2020年時点では、これが最後のアルバムになります。2016年のライヴ活動引退の6年前の作品ですが、氷室京介総決算という印象の作品になっています。
まず前半4曲目までは泥臭いロックンロールが続きます。僕は氷室京介の楽曲でもロックンロールな曲が好きなので、一聴目にはおっ、と思うのですが、この4曲は、歌いかたや曲調があまりにも矢沢永吉に似すぎていて、氷室京介としては厳しいですね。もっと普通に歌ってくれたらまだ良かったのかもしれませんが、楽曲のインパクトも少し足りないので、残念なところです。
5曲目の「The Distance After Midnight」からはいつもの氷室京介の声に戻ります。この中盤の曲、「忘れてゆくには美しすぎる」との2曲が特に良いですね。これまでの氷室京介のロックナンバーをうまく進化させた曲だと思います。
中盤以降はさほどインパクトのない曲が続き、前作に続き、また、カバー曲が一曲入っています。クイーンのボーカルとしても有名なアダム・ランバートの曲ですね。よいカバーだと思いますが、逆に自作曲の「ACROSS THE TIME」が、初回版のみのボーナストラック扱いになっていて、普通逆だろうと思ってしまいますね。アルバムの構成を見た上での判断なのでしょうが。
終盤は、ビートルズの「Taxman」みたいな「Traumatic Erotics」を経て、ラストの「Bang The Beat」で盛り上げて終わります(ACROSS THE TIME とSafe and Soundは初回版のみのボーナストラック)。この曲こそ、本作を代表する曲ですね。もっとも氷室京介らしい曲でありつつ、「Claudia」みたいな懐かしい感じでもなく、氷室京介らしさを現代にアップデートできた素晴らしい曲だと思います。
全体をみて、「SHAKE THE FAKE」と同じくらいロックに振り切った作品に仕上がっています。しかし、冒頭4曲が弱いのが致命的ですね。あとスローテンポの曲が弱いのも気になります。
これまでアルバムごとに新しい試みを行ってきた氷室京介ですが、今作はそういった試みがない、珍しい作品となっています。つまり総決算ということなのでしょう。氷室京介として、ここがひとつの終着点だったのかな、と感じさせる作品ですね。