Japanese Music Reviews

歴史の中で消費され、捨てられていく日本の音楽を紹介し、文化として再構築することの一助になれば

【布袋寅泰】10 MONSTER DRIVE(2005)

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10 MONSTER DRIVE

はい、今回は布袋寅泰の10枚目のオリジナルアルバム、「MONSTER DRIVE」をご紹介しましょう。

前作の「DOBERMAN」が総集編的な内容だったので、今回はまた新しい路線を探るのか、と思ったら、それは半分当たり、半分外れでしたね。

まず、本作はもともとブライアン・セッツアーとの共同プロジェクトとして作成される予定のアルバムでした。そういう新しい路線を探ろうとしていたところ、結局それが実現しなかったため、布袋のニューアルバムとして、残された楽曲も含めて完成させたのが本作だそうです。

ただ、そういった背景は特に重要ではなくて、ブギやロカビリーなどの古典的なロックンロールの多い、楽しいロックの詰まったアルバムですね。また、これまでの布袋の作品の中でも、最もギターを弾きまくっており、ギターを聴かせるアルバムでもあります。インストも3曲といつもの3倍ですしね。

基本的にロカビリーやブギのパーティーチューンが多くて、ドライブ中にかけるとよく合うような曲が詰まっています。シングルの「IDENTITY」や「火の玉BOOGIE」などですね。それ以外にも、前作からの延長線上で、歌謡曲にさらに接近した曲が目立ちますね。「永遠の花」は完全な歌謡曲ですが、シングルの「LIBERTY WINGS」なんてキャンディーズみたいな曲ですし、「MIRROR BALLも、まるで加山雄三の曲のインストバージョンのようです。それらがロックンロールの曲と違和感なく共存しているのが本作の最大の特徴でしょうか。

ただ、楽しく聞ける作品ではありますが、反面さらりと聞き流しやすいというところもあります。良くも悪くも古典的であっけらかんとしたサウンドなので。それは別に弱みということじゃなく、この作品のキャラクターということですけれども。

布袋の最高傑作とか名作と言われるような作品ではないですが、聞いていて楽しい、良い作品ですね。布袋の作品の中でも特に人にお勧めしやすい作品ともいえます。ただ、アルバムジャケットのせいでファンではない一般リスナーが手を伸ばしづらいのでないかな、と心配してしまいますね。余計なお世話でしょうが。